「自分に価値があると思えない」「褒められても素直に受け取れない」――こうした状態が長く続くと、性格の問題だと結論づけてしまいがちです。
ただ実際には、自己肯定感の低さには育ってきた環境・今いる環境・体の状態という、いくつもの要因が重なっていることがほとんどです。原因を分けて見ていくと、手をつけられる場所が見えてきます。
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自己肯定感が低い状態とは
自己肯定感とは、ありのままの自分を「これでいい」と受け止められる感覚を指します。これが低い状態では、次のような反応が出やすくなります。
- うまくいっても「たまたま」「運が良かった」と考える
- 褒め言葉を否定してしまう
- 頼まれごとを断れず、抱え込む
- 他人の機嫌を過剰に気にする
- 失敗したときに、自分の存在ごと否定する
- 人と比べて落ち込む時間が長い
参考として、日本の若者のうち「自分自身に満足している」と答えた割合は45.1%で、欧米の国々の8割前後と比べて低い水準にあると報告されていました(内閣府 平成30年度 我が国と諸外国の若者の意識に関する調査)。この調査はその後こども家庭庁に引き継がれ、令和5年度の調査では日本の割合に改善が見られたものの、諸外国と比べて低い傾向は続いていると報告されています。個人の資質というより、社会や文化の影響も大きいと考えられている領域です。

自己肯定感が低くなる主な原因
原因1:育ってきた環境
幼い頃に「条件つきで認められる」経験が続くと、そのままの自分では受け入れられないという感覚が残りやすくなります。テストで良い点を取ったときだけ褒められた、兄弟姉妹と比べられた、といったケースです。
これは、当時の本人にはどうにもできなかったことです。原因を知る目的は、過去を責めることではなく、今の反応がどこから来ているのかを理解することにあります。
原因2:今いる環境で否定され続けている
職場や家庭で日常的に否定的な言葉を浴びていると、自己肯定感は下がり続けます。この場合、いくら考え方を変える練習をしても追いつきません。
環境が原因のときに必要なのは、思考の調整ではなく距離を取る行動です。ハラスメントに当たる状況であれば、記録を残して相談する段階に入っています。
原因3:完璧主義と「べき思考」
「きちんとやるべき」「迷惑をかけてはいけない」といった基準が高すぎると、達成できない日が積み重なります。基準に届かない自分を毎日採点していれば、評価は下がる一方です。
原因4:比較の量が増えている
SNSでは、他人の人生の良い場面だけが並びます。編集された他人のハイライトと、編集されていない自分の日常を比べていることになります。比較の材料が増えた分だけ、落ち込む機会も増えました。
原因5:失敗体験と、その解釈
失敗そのものより、失敗をどう解釈したかが尾を引きます。「今回はうまくいかなかった」で止まれば経験として残りますが、「自分はだめな人間だ」まで進むと、自己評価そのものが削られます。
原因6:体の状態
睡眠不足、慢性的な疲労、栄養の偏りがあると、思考はネガティブに傾きます。心の問題だと思っていたものが、休養をとると軽く感じられることもあります。目の疲れが残ったままだと横になっても休んだ感じがしにくいため、就寝前にホットアイマスクを使って一息つく方もいます。

原因別の対策
過去が原因のとき:区別する練習
「当時の環境で身についた反応」と「今の自分の価値」を分けて考えます。書き出すと整理しやすくなります。
- いつ、どんな場面でその感覚が出るか
- そのとき頭に浮かぶ言葉(誰の言葉に似ているか)
- 今の状況に、その言葉は当てはまるか
方眼ノートなど、自由に書ける紙を1冊決めておくと続けやすくなります。書き込み式の認知行動療法のワークブックを使う方もいます。
書き出して整理する作業は、ノートのほかにアプリでも続けられます。AIセルフケアアプリのAwarefy(アウェアファイ)は、毎日の気分を記録して見返せるほか、考え方のクセに気づくための認知行動療法のプログラムが用意されていると案内されています。無料プランもあり、治療の代わりではなく日常のセルフケアを補うものです。詳しくは公式サイトで確認できます。

今の環境が原因のとき:距離を取る
- 関わると消耗する相手との接触を減らす
- 見るとつらくなるSNSアカウントをミュートする
- 職場のハラスメントは日時と内容を記録し、相談窓口に伝える
- 異動や転職も、選択肢として検討する
働く方の相談先や職場のメンタルヘルスの情報は厚生労働省 こころの耳にまとまっています。
完璧主義が原因のとき:基準を下げる
「80点で出す」を合言葉にしてみてください。仕上げに使っていた時間の一部を休息に回すと、続けられる量が増えます。
できなかったことを数える習慣を、できたことを数える習慣に置き換えるのが、この原因への基本的な対策です。
比較が原因のとき:材料を減らす
SNSの通知を切る、見る時間を1日15分に決める、アプリをホーム画面から外す。比較の機会そのものを減らすほうが、気持ちの持ち方を変えるより取りかかりやすい方法です。
失敗の解釈が原因のとき:事実と意味づけを分ける
「ミスをした」という事実と、「自分はだめだ」という意味づけを分けます。事実には対策を立て、意味づけには根拠を確認します。根拠が薄いことに気づけると、決めつけの速度が落ちていきます。
体調が原因のとき:休養を優先する
睡眠時間を確保し、食事を整え、軽く体を動かす。地味に見えますが、心の状態を支える土台です。自己評価は、体調によって上下します。外に出るのが億劫な日でも、部屋に敷いたマットの上で体を伸ばすだけなら取りかかりやすいという方もいます。
気分の落ち込み、不眠、食欲の変化などが2週間以上続いている場合は、セルフケアの範囲を超えている可能性があります。この記事の内容は診断や治療の代わりになるものではありません。気になる症状が続く場合は、心療内科や精神科などの医療機関に相談してください。心の不調全般の情報は厚生労働省 みんなのメンタルヘルスで確認できます。
自分の原因はどれか、切り分ける手順
原因が複数重なっているとき、どこから手をつけるか迷います。次の順番で確認すると、優先順位を決めやすくなります。
手順1:体調を確認する
ここ2週間、眠れているか。食事はとれているか。疲れが抜けているか。ここが崩れているなら、他の原因を考える前に休養が先です。判断力そのものが落ちている状態で自己評価をしても、正しい結論は出ません。
手順2:今の環境を確認する
日常的に否定される場面があるか。特定の相手と会ったあとに落ち込むか。「特定の場所・人と接したときだけ強く出る」なら、環境が主な要因である可能性が高くなります。
手順3:場面を選ばず出るかを確認する
一人でいるときも、誰といても同じように出るなら、長く身についた思考の癖が関わっていると考えられます。この場合は、書き出す練習や専門家との取り組みが向いています。
手順4:優先順位をつける
体調、環境、思考の順に手をつけるのが基本です。土台が崩れたまま考え方だけ変えようとしても、うまくいきません。順番を守るほうが、結果として早く進みます。
回復には波があるという前提を持つ
取り組み始めても、良くなったり戻ったりを繰り返します。この波を「失敗」と受け取ると、途中でやめてしまいがちです。
戻る日があって当たり前
体調、睡眠、天気、人間関係の出来事によって、自己評価は日々上下します。1日の落ち込みで全体を判断しないでください。
長い目盛りで見る
1週間単位ではなく、1か月・3か月単位で振り返ります。記録を残しておくと、この比較ができるようになります。同じ日付の欄が数年分並ぶ日記帳を使うと、去年の自分と見比べやすくなります。
戻ったときの手当てを決めておく
調子が落ちた日にやることを、あらかじめ決めておきます。早く寝る、散歩に出る、人に連絡する、といった具体的な行動です。落ちた日に何をするか決めておくことが、立て直しの助けになることがあります。
やってしまいがちな逆効果の対処
- 「自分はすごい」と無理に唱える:実感が伴わないと、かえって空虚さが強まることがあります
- 成果で埋めようとする:達成した瞬間だけ楽になり、また次を求める循環に入りやすくなります
- 否定してくる相手に認めてもらおうとする:判断基準を相手に預けることになります
- 短期間で結果を求める:長い時間をかけて形づくられた感覚は、数日では変わりません
どれも、真面目な方ほど陥りやすい対処です。うまくいかなかったからといって、努力が足りなかったわけではありません。


周囲の人が支えるとき
家族や友人の自己肯定感の低さが気になるとき、励ましの言葉が逆効果になることがあります。「自信を持って」と言われても、持ち方がわからないためです。
- 結果ではなく、取り組んだ過程に触れる
- 否定の言葉を使わず、まず最後まで聴く
- 他人と比べる言い方をしない
- 相談窓口の存在を、そっと伝えておく
- 支える側も一人で抱えず、相談してよい
自己肯定感が低い原因と対策に関するよくある質問
Q. 原因が過去にある場合、今さら変えられないのでは?
A. そんなことはありません。過去は変えられませんが、今の環境と今の扱い方は変えられます。変化には時間がかかるものの、方向を変えること自体はいつからでもできます。
Q. 親を許さないといけませんか?
A. 許すことが条件ではありません。距離を取ったままでも、自分の状態を整えることはできます。無理に和解を目指す必要はありません。
Q. 自己肯定感が低いと、うつ病になりますか?
A. 自己肯定感の低さと病気は別のものです。ただし、気分の落ち込みや不眠が続く場合は、専門家に相談することをおすすめします。
Q. カウンセリングは受けたほうがいいですか?
A. 生活に支障が出ている場合は、相談する価値があります。医療機関、自治体の精神保健福祉センター、民間のカウンセリングルームなど選択肢があり、費用や進め方は窓口ごとに異なります。
Q. 対策を試しても変わりません。
A. 環境側の要因が残っている可能性があります。否定される場面が日常的に続いているなら、そちらへの対処を先に検討してみてください。
Q. どこから手をつければいいかわかりません。
A. まずは睡眠です。眠りが整っていない状態では、どの対策も取り組みにくくなります。そのうえで、環境・思考の順に見ていくと整理しやすくなります。
まとめ:性格ではなく、要因の重なりとして見る
自己肯定感が低い原因は、過去の環境・今の環境・完璧主義・比較・失敗の解釈・体調というように、複数が重なっています。どれか1つを性格のせいにして終わらせないことが、対策の出発点です。
今日できるのは、眠る時間を30分早めることかもしれません。それだけでも、明日の自己評価が少し変わる方もいます。
つらさが続くときは、一人で抱えずに相談先を頼ってください。話す場所を持っておくことは、自分を守る行動です。
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