「通勤がなくなって楽になるはずだったのに、なぜか前より疲れている」「仕事が終わっても頭が切り替わらず、夜まで気が休まらない」――テレワークが日常になった今、こうした声は珍しくありません。
テレワークのストレスは、原因が生活空間の中に散らばっているため、本人にも見えにくいのが特徴です。通勤や雑談といった、これまで自動的に果たされていた機能が失われた分を、意識して埋め直す必要があります。ここでは、テレワーク特有のストレス要因を整理したうえで、環境・時間・体・つながりの4方向から対策を紹介します。
テレワークで疲れがたまる理由
1. オンとオフの境界がなくなる
出社していた頃は、通勤時間が「仕事モードに入る準備」と「仕事から離れる時間」の両方を担っていました。それがなくなると、朝はいきなり業務が始まり、終業後も部屋の中に仕事の気配が残り続けます。頭が休まらないまま夜を迎えるので、睡眠の質にも影響が出やすくなります。
2. 作業環境が体に合っていない
ダイニングテーブルとダイニングチェアの組み合わせは、長時間の作業を想定した高さになっていません。ノートパソコンを直置きすると画面が低くなり、首を前に倒した姿勢が続きます。肩こりや頭痛、腰の痛みは、心の消耗にもつながります。
3. コミュニケーションが「用件だけ」になる
オフィスでは、通りがかりの一言や雑談が、確認と安心の両方を担っていました。テレワークでは、用件のない連絡がしづらくなり、「これを聞いていいのだろうか」と迷う時間が積み重なります。
4. 評価されているか分からない不安
働いている姿が見えないため、「サボっていると思われていないか」という不安から、必要以上に長く働いてしまう方がいます。この状態が続くと、労働時間が伸びているのに達成感は薄い、という消耗の形になります。
5. 体を動かす機会が激減する
通勤の徒歩や階段の上り下りがなくなると、1日の歩数が大きく落ちます。運動量の低下は、気分の落ち込みや寝つきの悪さと結びつくことがあります。

対策1:作業環境を整える
テレワークのストレス対策で、いちばん効果を感じやすいのが物理環境の見直しです。気持ちの持ち方と違って、一度整えれば毎日効きます。
体に合った机と椅子
肘が90度になる高さで作業できているかを確認してください。合っていない場合、高さを変えられる昇降デスクや、腰を支えるランバーサポート付きのオフィスチェアを検討する価値があります。予算をかけずに済ませたい場合は、椅子に置く低反発のクッションと、足元に入れるフットレストで高さを調整する方法もあります。
画面の高さ
ノートパソコンを直置きしていると、目線が下がり、首に負担がかかります。ノートPCスタンドで画面を目の高さまで上げ、外付けのキーボードとマウスを使う構成にすると、姿勢がまっすぐになります。モニターアームで外部ディスプレイを浮かせれば、机の面積も広く使えます。
音と光
家族の生活音や外の工事音が集中を削っている場合は、ノイズキャンセリング機能付きのヘッドホンが助けになります。夕方以降は、天井の白い光をつけっぱなしにするより、暖色の間接照明に切り替えるほうが、頭が休むモードに入りやすくなります。
- 「仕事をする場所」と「くつろぐ場所」を、同じ椅子にしない
- 寝室では仕事をしない(眠る場所に仕事の記憶を持ち込まない)
- 終業後は、パソコンを閉じて視界から外す
対策2:時間の区切りを自分でつくる
始業前の「疑似通勤」
仕事を始める前に、15分ほど外を歩いてから席につく。これだけで、仕事モードへの切り替えがかなりスムーズになります。天候が悪い日は、着替える、コーヒーを淹れる、といった毎日同じ手順を「始まりの合図」として決めておくのもよい方法です。
終業の儀式
終業時刻にアラームを設定し、鳴ったらパソコンを閉じてカバンや引き出しにしまう。机の上を片付ける。翌日のタスクを3つだけ書き出して、その日は終わりにする。終わりを行動で示さないと、頭はいつまでも仕事から離れません。
終業後に画面から離れて過ごす時間をつくりたい方には、耳で聴く読書という選択肢もあります。audiobook.jpは、プロのナレーターや声優が書籍を読み上げた作品を聴けるサービスで、聴き放題プランは月額1,330円、初めての方向けに14日間の無料体験があります。あらかじめダウンロードしておけばオフラインでも再生できます。体験後は自動で課金が始まるため、詳しい条件は公式サイトで確認してください。

休憩を予定に入れる
在宅では、気づくと4時間ぶっ通しで画面を見ていた、ということが起こります。50分作業して10分離れる、といったリズムを、キッチンタイマーやスマートフォンのタイマーで管理してみてください。離席するときは、その場で立ち上がるだけでなく、別の部屋まで歩くのがおすすめです。


対策3:体を動かす量を戻す
通勤がなくなった分の運動量を、意識して足しにいきます。厳しいトレーニングである必要はありません。
- 昼休みに15分だけ外を歩く
- オンライン会議のうち、音声だけのものは立って参加する
- 厚手のヨガマットを1枚敷いておき、休憩のたびに肩甲骨まわりを伸ばす
- 買い物を1日1回、徒歩の用事として組み込む
体を動かす習慣は、寝つきや気分の安定を支える土台とされています。特に朝のうちに日光を浴びておくと、夜の眠りが整いやすくなると言われています(個人差があります)。ベランダに出て数分過ごすだけでも構いません。
運動量を戻そうと思っても、仕事のあとに外へ出る気力が残らない日はあります。そうしたときは、自宅でできるオンラインのヨガ・フィットネスSOELU(ソエル)を検討する方法もあります。ビデオレッスンは5分から30分のものがあるとされ、休憩の合間にも取り入れやすい長さです。体を動かす習慣づくりの手段のひとつで、気持ちや疲れへの効果をうたうものではありません。詳しくは公式サイトで確認できます。



対策4:人とのつながりを設計する
テレワークでは、放っておくと会話がゼロの日が生まれます。用件のない会話は、意識して予定に入れないと発生しません。
- チームで週に一度、議題のない15分の雑談枠を設ける
- チャットで完結させず、迷ったら短い通話に切り替える
- 週に1日は出社する、コワーキングスペースを使うなど、人がいる場所に身を置く
- 仕事と関係のない集まり(習い事、地域の活動など)を持つ
また、上司との1対1の面談がある職場なら、そこで業務量や評価について確認しておくと、「見えていないのでは」という不安が軽くなります。
職場の人に話しにくい悩みが続くときは、社外の第三者に話して整理する方法もあります。メザニンは、専門資格を持つカウンセラーに自宅からオンラインで相談できるサービスで、1回50分、会員登録は無料です。医療行為ではなく診断や治療の目的では使えないため、つらさが強いときは受診や公的な窓口を先に考えてください。詳しくは公式サイトで確認できます。



働きすぎを防ぐために
テレワークであっても、労働時間の管理は使用者の責任です。始業・終業の時刻を自分でも記録し、時間外の連絡への対応ルールをチームで決めておいてください。長時間労働が常態化している場合は、社内窓口や労働局の総合労働相談コーナーに相談できます。
働く方向けの情報や相談窓口は、厚生労働省のこころの耳 相談窓口のページにまとまっています。こころの耳電話相談(0120-565-455)は、平日17時から22時、土日10時から16時に対応しており、SNSやメールでの相談も受け付けています。心の不調全般についてはみんなのメンタルヘルスも参考になります。
こんな状態が続くときは相談を
環境や習慣を整えても改善しない場合、疲労が蓄積している可能性があります。次のような状態が2週間以上続いているなら、心療内科や精神科など医療機関への相談を検討してください。
- 寝つけない、夜中に何度も目が覚める
- 休日に何もする気が起きない状態が続く
- 朝、パソコンを開くのが強く億劫に感じる
- 食欲が極端に増えた、または落ちた
- 頭痛や胃の不調が続くが、検査では異常が見つからない
職場に産業医や保健師がいる場合は、そちらに相談する選択肢もあります。ストレスチェック制度で高ストレスと判定された場合、医師の面接指導を受けられる仕組みがあります。


ストレスをためやすい人の傾向
同じ環境でも、テレワークの負荷の感じ方には差があります。次のような傾向がある方は、意識して仕組みを整えておくと消耗を抑えやすくなります。
まじめで、区切りをつけるのが苦手なタイプ
「終わってから休もう」と考えるため、終わりが来ないまま夜になります。このタイプの方は、休憩や終業を先に予定として固定してしまうほうがうまくいきます。
人と話すことでエネルギーを回復するタイプ
雑談が減ると、消耗が回復しないまま積み上がります。週に一度でよいので、人と会う予定を先に入れておくと安定しやすくなります。
まわりの評価が気になるタイプ
「見られていない不安」から働きすぎる傾向があります。作業した内容を短く記録して共有する習慣をつくると、不安と労働時間の両方が落ち着きやすくなります。
生活のリズムが崩れやすいタイプ
起床時刻が日によってばらつくと、日中の集中力にも影響が出ます。起きる時刻だけは一定に保つことを、最初の一手にしてみてください。
1日の流れをつくり直してみる
対策を個別に足していくより、1日の型を決めてしまうほうが続きます。あくまで一例ですが、次のような組み立て方があります。
| 時間帯 | やること | ねらい |
|---|---|---|
| 始業前 | 着替えて15分歩く、カーテンを開けて光を浴びる | 仕事モードへの切り替えと体内リズムの調整 |
| 午前 | 集中が必要な作業を先に置く | 頭が働く時間帯を有効に使う |
| 昼 | 机から離れて食事、可能なら外に出る | 視線と姿勢のリセット |
| 午後 | 会議や確認作業、50分ごとに離席 | 同じ姿勢の連続を避ける |
| 終業時 | アラーム→片付け→翌日のタスクを3つ書く | 頭を仕事から降ろす |
| 夜 | 暖色の照明に切り替え、パソコンは視界から外す | 眠りに入りやすい状態をつくる |
この型のすべてを守る必要はありません。自分がいちばん崩れやすい時間帯だけを固定するという使い方でも十分です。
よくある質問
Q. 家に仕事専用の部屋がありません
A. 部屋を分けられない場合は、「向き」で分けるという方法があります。仕事中は壁側を向く、終わったら椅子ごと部屋の中心に向き直す。デスクの上を終業時に片付けて、パソコンを箱にしまうだけでも切り替えの助けになります。
Q. 家族がいて集中できません
A. 会議の時間帯を家族と共有しておく、ドアに札を掛ける、といった見える形のルールが有効です。音の問題には、ノイズキャンセリング機能付きのヘッドホンや、フォームタイプの耳栓が役立ちます。
Q. 出社したほうがよいのでしょうか
A. 人によって合う働き方は異なります。テレワークが合わないと感じる場合は、週に1、2日の出社を組み合わせる形を上司に相談してみてください。全部か無しかで考える必要はありません。
Q. オンライン会議が続くと極端に疲れます
A. 画面越しの会話は、表情や間の情報が読み取りにくく、負荷が高くなりやすいと言われています。会議と会議の間に5分の空きをつくる、カメラをオフにできる場面ではオフにする、といった調整を試してみてください。
Q. 運動する時間がとれません
A. まとまった時間を確保しようとすると続きません。会議中に立つ、休憩ごとに階段を1往復する、といった細切れの積み上げでも構いません。時間ではなく回数で考えると、始めやすくなります。
まとめ:失われた区切りを、意識して足し直す
テレワークのストレスは、性格や気力の問題ではなく、通勤や雑談といったこれまで自動的に働いていた仕組みが抜け落ちたことから生まれます。だからこそ、対策も仕組みで補うのが現実的です。
体に合った机と椅子、始業と終業の合図、体を動かす時間、そして人と話す予定。この4つを少しずつ整えていけば、同じ働き方でも消耗の度合いは変わってきます。
それでも不調が続く場合は、こころの耳や産業医、医療機関へ相談してください。今日はまず、終業時刻のアラームを1つ設定するところから始めてみましょう。



