「休んでいるはずなのに、体の力が抜けない」「布団に入っても頭が動き続けている」――そんな状態が続いているなら、意識的にゆるめる時間を作ってみる価値があります。
リラクゼーション法とは、呼吸がゆっくりになる、心拍が落ち着くといった体のリラックス反応を意図的に引き出すための方法の総称です。呼吸法、漸進的筋弛緩法、自律訓練法、イメージ法など複数の方法が知られており、詳しい分類は厚生労働省eJIMのリラクゼーション法の解説にまとめられています。ここでは、自宅や職場で取り入れやすい方法を、場面ごとに整理して紹介します。
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まず知っておきたい:休むことにも技術がいる
「休日にたっぷり寝たのに疲れが取れない」という経験は、多くの方が持っているのではないでしょうか。体は横になっていても、頭の中で仕事のことを考え続けていれば、緊張は続いたままです。
受け身の休息(寝る・ぼんやりする)と、能動的な休息(意図的にゆるめる)は別ものだと考えると分かりやすくなります。リラクゼーション法は後者にあたり、手順を覚えれば数分で使える技術です。

基本になる4つの方法
1. 呼吸法
いちばん道具がいらず、場所も選ばない方法です。ポイントは、吸うことより吐く息を長くするところにあります。
- 椅子に浅く座り、肩の力を抜く
- 鼻から4秒かけて吸う
- 口をすぼめて、6〜8秒かけてゆっくり吐く
- これを5〜10回くり返す
息苦しさを感じたら、秒数にこだわらず自然な呼吸に戻してください。無理に深く吸おうとすると、かえって苦しくなることがあります。
2. 漸進的筋弛緩法
体の各部位に一度力を入れてから、一気に力を抜く方法です。「力を抜く」だけだと感覚がつかみにくいため、先に緊張させることで、ゆるむ感覚が分かりやすくなります。
手→腕→肩→顔→足、という順に、それぞれ5〜7秒力を入れて、15〜20秒かけてゆるめます。ゆるんだあとの感覚をじっくり味わう時間のほうが大事とされているので、力を抜いたあとを急がないようにしてください。
3. 自律訓練法
「両腕が重たい」「両腕が温かい」といった短い言葉を心の中でくり返しながら、体の感覚に注意を向けていく方法です。手順が決まっているぶん取り組みやすい一方、独学だと自己流になりやすい面もあります。書籍や、指導している医療機関の資料に沿って進めるとよいでしょう。
4. イメージ法
波の音が聞こえる海辺や、静かな森など、自分にとって落ち着く場面を思い浮かべる方法です。視覚だけでなく、音・匂い・肌に触れる空気まで思い浮かべると入りやすくなります。
場面別・取り入れやすい方法
職場で、短い時間で
席を立たずにできるものが現実的です。呼吸法を10回、肩だけの筋弛緩(肩をすくめて5秒、ストンと落とす)を3回。これだけでも切り替えの合図になります。
デスクワークが続くと、首と肩が固まって呼吸が浅くなりがちです。「夕方になると肩が上がったまま戻らない」という悩みを持つ方は少なくありません。デスクに置ける小型のマッサージボールや、首にかけられるネックピローがあると、休憩のたびに数十秒でゆるめられます。働く人向けのリラクセーション動画は厚生労働省こころの耳で無料公開されているので、昼休みに試してみるのもよいでしょう。
帰宅後、切り替えの時間に
入浴は、体を温めながら区切りをつくれる時間です。熱すぎるお湯は体に負担になるため、ぬるめの温度でゆっくり浸かるほうが落ち着いて過ごせます。好みの香りの入浴剤や、湯船で使える防水スピーカーがあると、その時間を積極的に取りにいく理由になります。
体をほぐしたい場合は、床に置いて背中を乗せるフォームローラーや、ふくらはぎに使えるマッサージガンといった道具も選択肢になります。道具そのものより「決まった時間にそれを使う」という習慣のほうが効いてきます。
寝る前、布団の中で
布団に入ってから考えごとが止まらない場合は、横になったままできる筋弛緩法やイメージ法が向いています。スマホの画面を見ないことも大切なので、音声だけを聴く形にすると続けやすくなります。遮光性のあるアイマスクや、寝ながらでも耳が痛くなりにくい薄型のスリープヘッドホンがあると、環境を整えやすくなります。

体を動かす系のリラクゼーション
じっとしているのが苦手な方には、軽く動かす方法のほうが合うことがあります。
ゆっくりしたストレッチ
反動をつけず、20〜30秒かけて伸ばします。伸ばしている部位に注意を向けると、それ自体が集中の練習になります。厚みのあるヨガマットがあると、床の硬さが気にならず取り組みやすくなります。
散歩
景色が変わることで、頭の中の堂々巡りから距離が取れます。足の裏の感覚や、風の温度に注意を向けながら歩くと、より切り替わりやすくなります。
ゆるやかなヨガ
呼吸と動きを合わせる形式は、体を動かす要素と呼吸法の要素を同時に取り入れられます。横になったまま行う形式もあり、疲れている日でも取りかかりやすい選択肢です。
取り入れるときの注意点
リラクゼーション法は、診断や治療を行うものではありません。取り組んでいる最中に息苦しさや強い不安が出る場合は中断してください。持病がある方や妊娠中の方は、事前に主治医に相談してから取り入れると安心です。気分の落ち込みや不眠が2週間以上続くなど、日常生活に支障が出ているときは、心療内科や精神科など医療機関へ相談してください。相談先は厚生労働省のみんなのメンタルヘルスで確認できます。
もうひとつ気をつけたいのが、「ちゃんとリラックスできているか」を自分で採点してしまうことです。うまくできているかを確認しようとするほど、体は緊張します。できたかどうかを判定せず、やった回数だけ数えるくらいの距離感がちょうどよいでしょう。
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五感からゆるめるという入り方
手順を覚えるのが面倒に感じるときは、五感のどれか一つに気持ちよさを用意するところから入る方法もあります。動作を覚えなくてよいぶん、疲れきっている日でも取りかかれます。
聴覚:音を選ぶ
言葉のない音のほうが、頭が休まりやすいと感じる方が多いようです。雨音や波音といった環境音、テンポの遅い器楽曲などを、小さめの音量で流します。作業用に流しっぱなしにするのではなく、聴くことだけをする10分を作るのがポイントです。
触覚:肌ざわりを変える
手触りのよいブランケットにくるまる、厚手のルームソックスをはくなど、肌に触れるものを変えるだけでも切り替えになります。重みのあるブランケットを好む方もいます。
視覚:情報量を減らす
明るい照明と散らかった視界は、それだけで刺激になります。照明を一段落とす、机の上のものを片づける、といった単純な操作で、目から入る負荷が減ります。
温度:温かさを使う
入浴のほかにも、温かい飲みものを両手で持つ、蒸しタオルを首の後ろに当てるといった方法があります。カフェインの少ないハーブティーやルイボスティーを、夜の定番にしている方もいます。
続けるための記録の付け方
リラクゼーションは、効果が数字で見えにくいぶん、続いている実感が持ちにくい取り組みです。簡単な記録があると、その弱点を補えます。
おすすめは、やる前とやったあとに、体の緊張度を10段階で書くだけという方法です。「前7→後5」と2つの数字を残すだけなので、1日10秒で終わります。1か月分をまとめて眺めると、自分にとって効きやすい方法と時間帯が見えてきます。
紙に残すなら、月間カレンダー形式の手帳や、1日1行だけ書ける3年日記のようなノートが向いています。スマホのメモでも構いませんが、通知に引き戻されやすい方は紙のほうが確実です。
自分に合う方法の見つけ方
どの方法が合うかは、人によってかなり違います。次の順番で試してみると絞り込みやすくなります。
ステップ1:3つ試してみる
呼吸法・筋弛緩法・イメージ法を、1つずつ別の日に試します。同じ日にまとめてやると比較になりません。
ステップ2:やった直後の感覚をメモする
「肩が軽くなった」「変化なし」「かえって落ち着かなかった」など、一言で構いません。
ステップ3:いちばん抵抗が少なかったものを続ける
効果の大きさより、抵抗なく始められたかどうかで選ぶほうが長続きします。続かない方法は、どれだけ良いとされていても選択肢になりません。

リラクゼーションの方法に関するよくある質問
Q. 1日どのくらいやればいいですか?
A. 長さより回数です。1回3分でも、日に2〜3回のほうが体は慣れていきます。
Q. やっている最中に眠くなります。
A. 体がゆるんできたサインとも言えます。夜であればそのまま眠って構いません。日中に困る場合は、椅子に座った姿勢に変えてみてください。
Q. 呼吸法をすると苦しくなります。
A. 秒数を守ろうとして無理をしている可能性があります。自然な呼吸に戻し、吐く息を少しだけ長くする程度から始めてください。
Q. マッサージやサロンとの違いは何ですか?
A. 人にやってもらう方法は受け身の休息、自分で行う方法は能動的な休息にあたります。どちらか一方ではなく、組み合わせて構いません。
Q. 効果が感じられないときは?
A. 方法が合っていないか、期待の水準が高すぎる可能性があります。別の方法に切り替えるか、「ゆるむ」ではなく「ゆるめようとした」で合格にしてみてください。
Q. 家族がいると集中できません。
A. 時間帯をずらす、イヤホンを使う、通勤中の電車内でやるなど、場所を変える工夫が有効です。1人になれる時間は意外と探せば見つかります。
まとめ:抵抗の少ない方法を、決まった時間に
リラクゼーションの方法には、呼吸法・漸進的筋弛緩法・自律訓練法・イメージ法といった型があり、体を動かす形式も含めれば選択肢はさらに広がります。
大切なのは、自分がいちばん抵抗なく始められる方法を選び、決まった時間に組み込むことです。うまくできているかを採点せず、やった回数だけを積み上げていきましょう。気になる症状が続く場合は、一人で抱えず医療機関へ相談してください。今日は帰宅後に呼吸を10回、というところから始めてみてください。
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