カウンセリングを調べていると、「認知行動療法」「来談者中心療法」「家族療法」といった聞き慣れない言葉が次々に出てきます。どれが自分に合うのか分からないまま、なんとなく近くの相談室を選んでしまう――そんな話をよく聞きます。
実は「カウンセリングの種類」という言葉には、どんな理論にもとづく方法か、どんな形式で受けるか、どこで受けるかという3つの軸が混ざっています。この3つを分けて考えると、情報がすっきり整理できます。ここでは順番に見ていきます。
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軸1:どんな理論にもとづく方法か(心理療法の種類)
心理療法にはさまざまな流派があります。ここでは日本で比較的よく耳にするものを紹介します。どれが優れているという話ではなく、扱いやすいテーマや進め方が異なると考えてください。
来談者中心療法(クライエント中心療法)
相談する人の語りを丁寧に受け止め、その人自身の中にある力を引き出していく考え方です。指示やアドバイスを中心にせず、話を聴くことに重心を置きます。日本のカウンセリングの土台として広く共有されている考え方でもあります。
認知行動療法(CBT)
出来事のとらえ方(認知)と行動に注目し、そこに働きかけていく方法です。宿題(ホームワーク)が出ることも多く、構造がはっきりしているのが特徴です。うつや不安に関する領域で用いられるほか、不眠に特化した形(CBT-I)もあります。
精神分析的心理療法
自分では気づいていない心の動きや、過去の体験が現在に及ぼしている影響に目を向けていく方法です。時間をかけて進める性質があり、頻度を保って継続することが前提になります。
家族療法・システムズアプローチ
問題を個人だけのものと見ず、家族や職場といった関係のあり方全体から考える方法です。夫婦関係や親子関係、不登校などのテーマで用いられます。本人以外の家族が相談に来るところから始まる場合もあります。
ブリーフセラピー(解決志向アプローチ)
原因の追究より、「どうなりたいか」「すでにうまくいっている場面はどこか」に焦点を当てる方法です。比較的短い回数での取り組みを想定しています。
マインドフルネスを取り入れたアプローチ
今この瞬間の感覚に注意を向ける練習を通して、考えとの距離の取り方を変えていく方法です。呼吸や体の感覚に注目するワークが用いられます。
遊戯療法・芸術療法
言葉での表現が難しい場合に、遊びや描画、箱庭などを通してやりとりする方法です。子どもの相談で用いられることが多いものです。

軸2:どんな形式で受けるか
同じ心理療法でも、受け方はいくつかあります。生活スタイルや話しやすさで選んでください。
| 形式 | 特徴 | 向いている方 |
|---|---|---|
| 対面 | 表情や間合いが伝わりやすい。移動時間がかかる | じっくり腰を据えて話したい方 |
| ビデオ通話 | 自宅から受けられる。顔を見て話せる | 通う時間を確保しづらい方 |
| 電話 | 顔を出さずに話せる。準備が少ない | 表情を見られるのが苦手な方 |
| チャット・メール | 文章で整理しながら書ける。時間の制約が少ない | 話すより書くほうが得意な方 |
また、参加する人数による違いもあります。1対1の個人カウンセリングのほか、カップル・家族・グループという受け方もあるため、テーマによっては個人以外の形が向いていることもあります。同じ悩みを持つ人が集まるグループでは、自分だけではないと知ることが支えになる場合もあります。
オンラインで受けるときの準備
ビデオや電話を選ぶ場合、環境づくりが話しやすさを左右します。家族に声が聞こえるのが気になって、言いたいことを飲み込んでしまった――これは非常によくある困りごとです。
マイク付きの有線イヤホンや密閉型のヘッドセットがあると、音漏れを抑えつつ相手の声も聞き取りやすくなります。
ノートパソコンの内蔵カメラは顔が暗く映りがちなので、小型のリングライトを1つ用意しておくと表情が伝わりやすくなります。
話したいことを書き留めておくA5サイズのノートも、限られた時間を活かすうえで役に立ちます。

軸3:どこで受けるか(相談機関の種類)
医療機関(心療内科・精神科)
医師の診察を受けたうえで、院内の公認心理師などが担当する形です。診断や薬の相談もあわせてできます。医師が行う精神療法は保険の対象になりますが、心理職によるカウンセリングは自費になる医療機関が多くあります。
民間のカウンセリングルーム
心理職が独立して運営している相談室です。得意分野を掲げているところが多く、テーマに合わせて選びやすいのが利点です。原則として自費になります。
オンラインカウンセリングサービス
担当者を検索して指名し、ビデオ・電話・チャットで相談できるサービスです。移動時間がかからず、地方にお住まいでも選択肢が広がります。こちらも自費です。
公的機関・自治体の窓口
精神保健福祉センター、保健所、市区町村の相談窓口などです。無料または低額で相談できるため、最初の一歩として現実的な選択肢になります。窓口の情報は厚生労働省のこころの耳で確認できます。
職場・学校の相談窓口
従業員支援プログラム(EAP)、産業医面談、学生相談室などです。所属していれば無料で使えることが多く、守秘の範囲を確認したうえで利用できます。
担当者の資格による違い
肩書きもさまざまですが、代表的なものを押さえておくと選ぶときの目安になります。
- 公認心理師:心理職として唯一の国家資格。医療・教育・福祉・産業など幅広い領域で活動します
- 臨床心理士:民間資格。指定大学院の修了などが要件で、5年ごとの更新があります
- 精神保健福祉士:国家資格。制度の活用や生活面の支援に強みがあります
- 産業カウンセラー:民間資格。職場での相談対応を中心に扱います
資格の有無だけで相性が決まるわけではありませんが、公認心理師または臨床心理士かどうかは、入口の目安として確認しておくとよいでしょう。

悩みのテーマから種類を絞り込む
理論の名前から入ると迷いやすいので、テーマから逆算する方法を紹介します。
- 考え方の癖を変えたい・具体的な方法を知りたい → 認知行動療法を扱う担当者
- とにかく話を聴いてほしい → 来談者中心の姿勢を大切にする担当者
- 夫婦や親子の関係を扱いたい → 家族療法・カップルカウンセリングの経験がある担当者
- 短い回数で方向を定めたい → ブリーフセラピーを扱う担当者
- 子どもの相談をしたい → 遊戯療法など子どもの領域の経験がある担当者
実際には、複数の方法を組み合わせて進める担当者も多くいます。プロフィールに書かれた専門領域を見て、近いものを選べば十分です。
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「じっくり型」と「構造化型」で考えてみる
流派の名前が多すぎて混乱するときは、大きく2つの方向性に分けて考えると分かりやすくなります。どちらが優れているという話ではなく、進み方の違いです。
じっくり型(聴くことに重心を置く)
来談者中心療法や精神分析的心理療法は、時間をかけて語り、自分の内側を見ていく進め方になります。答えをすぐに求めず、話しながら整理していきたい方に向いています。回数は多めになりやすく、継続が前提になります。
構造化型(課題に取り組む)
認知行動療法やブリーフセラピーは、目標や取り組む課題をはっきりさせて進めます。宿題が出ることもあり、日常の中で試して振り返るサイクルが中心になります。何をすればいいかを具体的に持ち帰りたい方に向いています。
どちらが合うか分からないとき
初回に「じっくり聴いてもらいたいのか、具体的な方法を教わりたいのか」を伝えるだけで、担当者は進め方を調整してくれます。専門用語で希望を伝える必要はありません。自分の希望を言葉にして渡すこと自体が、種類選びの一番の近道になります。
とはいえ、その場で言葉にするのは難しいものです。初回までに聞きたいことと希望を紙に書いておくと、緊張していても渡すだけで伝わります。持ち歩けるA5サイズのノートが1冊あると、回を重ねたときの記録にもそのまま使えます。
種類選びで気をつけたいこと
- 特定の方法が万能であるかのような説明をしているところには注意しましょう
- 高額な長期契約をその場で求められた場合は、持ち帰って検討してください
- 診断や薬の処方は医師の役割です。心理職はこれを行いません
- 気分の落ち込みや不眠が2週間以上続いている場合は、種類を比べる前に医療機関へ相談してください
心の病気や治療に関する基礎的な情報は、厚生労働省のみんなのメンタルヘルスや、国立精神・神経医療研究センターのサイトでも確認できます。

カウンセリングの種類に関するよくある質問
Q. どの心理療法がいちばん効果がありますか?
A. テーマや相談する方の状態によって向き不向きがあり、一律に優劣をつけられるものではありません。担当者との相性のほうが結果に影響するとも言われています。
Q. 途中で方法を変えることはできますか?
A. 進め方が合わないと感じたら、そのまま伝えて構いません。担当者が方針を調整することもありますし、別の担当者を紹介してもらう選択肢もあります。
Q. チャットのカウンセリングでも意味がありますか?
A. 文章のほうが考えを整理しやすい方には向いています。ただし、緊急性の高い状態のときは、電話や対面のほうが適していることがあります。
Q. コーチングとカウンセリングは違いますか?
A. 目的が異なります。コーチングは目標達成に向けた行動の支援が中心で、カウンセリングは心の状態や関係の課題を扱う場です。心身の不調がある場合は、カウンセリングや医療機関のほうが適しています。
Q. 認知行動療法は保険で受けられますか?
A. 医療機関で定められた要件を満たして行われる場合は保険の対象になりますが、実施できる医療機関は限られます。民間の相談室で受ける場合は自費です。
Q. 家族を連れて行ってもいいですか?
A. 家族同席を受け付けている機関もあります。予約時に相談してみてください。本人が来られない段階で、家族だけが相談に行く形もあります。
まとめ:3つの軸に分けると迷いが減る
カウンセリングの種類は、理論(心理療法の流派)、形式(対面・ビデオ・電話・チャット、個人・家族・集団)、機関(医療機関・民間・オンライン・公的窓口・職場)の3つの軸で整理できます。
最初から理論の名前で選ぼうとせず、まず「どこで受けるか」と「どの形式なら話せそうか」から決めるほうが、現実的に前へ進みます。費用を抑えたいなら自治体や職場の窓口から、時間を確保しづらいならオンラインから、という具合です。
そして、気分の落ち込みや不眠が続いている場合は、種類を比べることに時間をかけすぎず、医療機関へ相談してください。適した場所につないでもらうこと自体が、大きな前進になります。
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