なんとなく落ち着かない。肩と首がガチガチで、深く息が吸えない。夜になっても頭が冴えて眠れない。そんなとき、道具もお金もいらず、その場で試せるセルフケアとしてツボ押しがあります。
東洋医学では、体には気や血の通り道である経絡があり、その上に反応点としてのツボ(経穴)が並んでいると考えられてきました。ツボを押すこと自体は医療行為ではありませんが、立ち止まって自分の体に触れる時間そのものが、緊張をゆるめるきっかけになるという側面もあります。
ここでは、自律神経のケアを意識したいときによく取り上げられるツボの場所と押し方、続けるためのコツ、そして避けたほうがよい場面までをまとめました。効果の感じ方には個人差がありますので、心地よい範囲で試してみてください。
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ツボ押しの基本|「痛気持ちいい」で止める
力任せに押しても良い結果にはつながりにくく、かえって筋肉が硬くなることがあります。基本の押し方を先に押さえておきましょう。
- 強さ:「痛気持ちいい」と感じる程度。痛みを我慢する強さは避ける
- 時間:3〜5秒かけて押し、ゆっくり離す。これを5回ほど繰り返す
- 回数:1日2〜3回程度。朝・帰宅後・就寝前などに分ける
- 呼吸:押すときに息を吐き、離すときに吸う
- 姿勢:座って背中を預けられる状態で行うと、余計な力が入りにくい
呼吸を止めて力を込めるのは逆効果になりやすいので、押している間もゆっくり息を吐き続けることを意識してください。

手にあるツボ|デスクでもすぐ押せる
手のツボは、場所を覚えてしまえば会議中でも電車の中でも押せます。まずここから始めるのが現実的です。
内関(ないかん)
場所:手のひら側の手首のしわの中央から、指3本分ひじ寄りに進んだところ。2本の腱の間にあります。
気持ちを落ち着けたいときによく取り上げられるツボです。乗り物酔いや胃のむかつきの際に押される場所としても知られています。緊張して動悸がするときに、反対の手の親指でゆっくり押すという使い方がしやすいでしょう。
労宮(ろうきゅう)
場所:手を軽く握ったときに、中指の先が当たるあたり。手のひらのほぼ中央です。
疲れが溜まったときやストレスを感じたときに押されることの多いツボです。手のひら全体をもみほぐすついでに押すと続けやすくなります。
合谷(ごうこく)
場所:手の甲側、親指と人差し指の骨が合流する手前のくぼみ。
幅広い不調に用いられてきたことから、よく紹介されるツボです。押すと響く感じがある方も多い場所です。ただし妊娠中の方は刺激を避けるよう案内されることがあるため、心配な場合は控えるか、かかりつけの医師に相談してください。
神門(しんもん)
場所:手のひら側の手首のしわの上、小指側の端にあるくぼみ。
気持ちが高ぶって眠れないときに紹介されることの多いツボです。布団の中でも押せるので、就寝前のルーティンに組み込みやすい場所といえます。
頭・首まわりのツボ|考えすぎて休まらないときに
百会(ひゃくえ)
場所:左右の耳の上端を結んだ線と、体の中心線が交わる頭のてっぺん。押すと少しへこんだ感じがあります。
多くの経絡が集まる場所とされ、頭がぼんやりする、集中が続かない、寝つけないといったときによく取り上げられます。両手の中指を重ねて、真下に向かってゆっくり押すのがコツです。
天柱(てんちゅう)・風池(ふうち)
場所:後頭部の生え際、首の太い筋の外側のくぼみが天柱。そこからさらに指1本分外側が風池です。
デスクワークで首が前に出た姿勢が続くと、この周辺が固まりやすくなります。両手の親指を当て、頭の重みを預けるようにして押し上げると、力を使わずに刺激できます。
この部分は温めるのも取り入れやすい方法です。電子レンジで温めるタイプのネックウォーマーや使い捨ての蒸気温熱シートを使うと、押さずにゆるめることができます。

足のツボ|夜のリセットに向いている
太衝(たいしょう)
場所:足の甲側、親指と人差し指の骨の間をたどっていき、指が止まるところ。
イライラや目の疲れが気になるときに紹介されるツボです。座った姿勢で足を組み、親指でゆっくり押します。
湧泉(ゆうせん)
場所:足の裏、指を曲げたときにできるくぼみの中央あたり。
足の疲れや冷えが気になるときによく取り上げられます。手で押しにくい場合は、青竹踏みやゴルフボールを床に置いて足裏で転がす方法が手軽です。
失眠(しつみん)
場所:かかとの中央。
名前のとおり、眠りに関して紹介されることの多いツボです。かかとは皮膚が厚いため、指では届きにくいことがあります。握りこぶしで軽く叩く、木製のツボ押し棒を使う、といった方法が向いています。
三陰交(さんいんこう)
場所:内くるぶしの一番高いところから、指4本分上。すねの骨のきわ。
冷えや体調の揺らぎが気になるときに紹介される場所です。こちらも妊娠中は刺激を控えるよう案内されることがあるため、該当する方は医師に確認してください。
お腹のツボと、日中の姿勢
胃腸の調子は自律神経の状態と関わりが深いとされています。おへその上、指4本分の位置にある「中脘(ちゅうかん)」は、胃の不快感が気になるときに紹介されるツボです。手のひらを重ねて、ゆっくり円を描くようにさするだけでも構いません。
あわせて意識したいのが姿勢です。前かがみの姿勢が続くと呼吸が浅くなり、緊張が抜けにくくなります。ランバーサポート付きのクッションを椅子に置く、フットレストで足の裏を安定させる、といった調整で座り方が変わります。
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呼吸と組み合わせると、体がゆるみやすい
ツボ押しは、それだけで行うより呼吸と組み合わせた方が体の力が抜けやすくなります。おすすめは、押す動作と息を吐く動作をそろえる方法です。
やり方はシンプルです。鼻から4秒かけて息を吸い、口から8秒かけて細く長く吐きます。この吐いている8秒の間だけツボを押し、吸うときは力を抜く。これを5回繰り返すと、1分ほどで一連の流れが終わります。
ポイントは、吸う時間より吐く時間を長くとることです。息を吐いている間は体が休息の方向へ傾きやすいとされており、そこに合わせて刺激を入れると心地よさを感じやすくなります。慣れてきたら、通勤中の座席や休憩時間など、場所を選ばず取り入れられるようになります。
ツボ押しを避けたほうがよいとき
- 発熱しているとき、体調が明らかに悪いとき
- 飲酒の直後
- 食後すぐ(30分〜1時間ほど空ける)
- 押す部分に傷、炎症、腫れ、皮膚のトラブルがあるとき
- 妊娠中(刺激を避けるよう案内されるツボがあります)
- 手術後や治療中の部位の近く
また、ツボ押しは診断や治療の代わりにはなりません。動悸・めまい・息苦しさ・不眠が続く場合は、医療機関で相談してください。心の不調に関する相談先は厚生労働省「こころの耳」や、国立精神・神経医療研究センターのこころの情報サイトで調べられます。生活習慣と健康の基礎知識はe-ヘルスネットにまとまっています。
続けるためのコツ
ツボ押しは、思い出したときにやるだけでは習慣になりにくいものです。日常の動作にくっつけると続きます。
- 歯みがきのあとに百会を10秒押す
- 電車を待つ間に内関と合谷を押す
- 湯船の中で足裏の湧泉をほぐす
- 布団に入ってから神門を押しながら息を吐く
道具を目に入る場所に置いておくのも有効です。テレビの前に青竹踏み、デスクの引き出しにツボ押し棒、脱衣所にフットマッサージャー。「取りに行かなくてよい場所」に置くだけで、続く確率は上がります。

ツボと自律神経に関するよくある質問
Q. ツボを押せば自律神経の乱れは解消しますか?
A. ツボ押しは古くから行われてきたセルフケアですが、医療の代わりにはなりません。感じ方には個人差があります。不調が続く場合は医療機関へ相談してください。
Q. 正しい場所が分かりません。
A. 押してみて、他と違う感覚(響く、少し痛い、へこんでいる)がある場所が目安になります。多少ずれていても大きな問題はありません。周辺を含めてゆっくりほぐしてみてください。
Q. どのくらいの期間続ければよいですか?
A. その場で軽くなったと感じる方もいれば、変化が分かりにくい方もいます。まずは2週間ほど、寝る前の1分だけ続けてみるのが取り組みやすいでしょう。
Q. 押した後にだるくなりました。
A. 刺激が強すぎた可能性があります。次回は力を弱め、回数も減らしてみてください。水分を摂って休むことも大切です。
Q. お灸や鍼はどうですか?
A. 市販のせんねん灸などを自宅で使う方もいます。やけどに注意が必要で、皮膚が弱い方は台座の厚いタイプを選ぶとよいでしょう。鍼は資格を持つ施術者のもとで受けるものです。
Q. 子どもや高齢の家族にやってもよいですか?
A. 力を弱め、さするような刺激にとどめてください。皮膚が薄い方や骨がもろい方には、押すより温める方法が向いています。
まとめ|ひとつ覚えて、毎日押す
自律神経のケアを意識したいときによく取り上げられるツボには、手の内関・労宮・合谷・神門、頭の百会、首の天柱と風池、足の太衝・湧泉・失眠などがあります。押し方の基本は、痛気持ちいい強さで3〜5秒、息を吐きながら、1日2〜3回です。
大切なのは、たくさん覚えることではなくひとつを毎日続けることです。歯みがきの後や布団の中など、既にある習慣にくっつけると無理なく続きます。
ただし、ツボ押しはセルフケアであって治療ではありません。動悸や不眠、めまいなど気になる症状が続く場合は、早めに医療機関へ相談してください。焦らず、今日の1分から始めていきましょう。
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